エンジニアは「学ぶ」のではなく「作る」ことでしか成長しない
チュートリアルや研修ではなく、短い時間でチームでプロダクトを作ることがエンジニア成長の本質。非IT企業でも通用する実装中心の成長設計について
エンジニア育成という言葉には、どこか違和感がありました。 チュートリアルをこなし、資料を読み、研修を受ける。確かに知識は増えるけれど、「自分で何かを作れるようになった」という実感に結びつくことは少ない。
一方で、個人開発はどうかというと、これも長くは続かない。 モチベーションを一人で保ち続けるのは難しく、完成しないまま終わることも多い。
では、どうすれば人は本当に成長するのか。 その答えは短い時間でチームでプロダクトを作ることだと私は確信するようになりました。
ハッカソンは「学習の場」ではなく「意思決定の場」
ハッカソンが強い理由は、学習効率がいいからではありません。 本質はそこではない。
ハッカソンには、必ず時間制約があります。 時間が限られているからこそ、参加者は自然と問い始めます。
- いま本当に必要なものは何か
- これは後回しにできるか
- まず動かすには何からやるべきか
結果として、プロセスは最小化され、余計な手順は削ぎ落とされます。 レビューや承認、ドキュメントといった既存プロセスも、「このスピード感を出すにはどう変えるべきか」「自動化できないか」という発想に置き換わっていく。
これは研修資料では絶対に伝えられない。 スピードを身体で理解するからこそ起きる変化です。
熟練者の「所作」を見ることが、最大のコーチングになる
このスキームが非 IT 企業でも成立すると考える理由はここにあります。
熟練エンジニア、新人エンジニア、そして非エンジニアが同じチームに入り、同じ時間を過ごす。 その中で、熟練者は説明しすぎない。ただ、実装する姿を見せる。
- どこから手を付けるのか
- 何を捨て、何を残すのか
- 詰まったときにどう判断するのか
これらの「所作」は、100 万文字のドキュメントより雄弁です。 実際、先日のハッカソンではエンジニアではない職種の方が参加し、「次はエンジニアとしてコードを書きたい」と言い出しました。
それは知識を教えたからではありません。 「自分にもできる」という世界線を体験したからです。
毎月やれば、1年で12個のプロダクトが生まれる
ハッカソンの成果は、完成度の高いプロダクトである必要はありません。 動けばいい。未完成でもいい。ダサくてもいい。
重要なのは、「作った」という事実が残ること。
もしこれを毎月続けたらどうなるか。 1 年で 12 個のプロダクトが生まれる。半年でも 6 個だ。
半年間で 6 回、「ゼロから考え、作り、動かす」を繰り返した人は、ほぼ確実に「何でも作れる」側に移行する。
技術力以上に変わるのは、怖さが消えることです。 これは座学では絶対に得られない。
壮行会を「飲み会」で終わらせなかった理由
私自身、退職時の壮行会として AWS GameDay とハッカソンを企画しました。 それまでの慣例は飲み会をして終わり。でも、それを変えたかった。
結果として、「エンジニアは実装してナンボ」「アウトカムとしてプロダクトを作り続ける文化がいい」という価値観が共有され、「これは毎月やるべきだ」という声が自然に上がりました。
評価されたのは、イベントそのものではありません。 価値観が体験として共有されたことです。
この設計がなぜ必要か
多くの非 IT 企業には、優秀な人がいます。 足りないのは能力ではなく、「どう始めればいいかの具体像」です。
- チュートリアルではなく
- 研修でもなく
- 個人の努力に任せるのでもない
一緒に作る場を、組織として設計する。
それだけで、人は驚くほど変わります。
最後に
エンジニアは、学ぶことで成長するのではありません。 作ることでしか成長しない。
そして、作る環境は個人の努力ではなく、組織が設計できるものです。
ハッカソンはイベントではない。 文化を注入するための装置です。
この考え方は、IT 企業に限らず、あらゆる非 IT 企業にも展開できる。 私は、そう確信しています。