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DeepForm — AIの深層インタビューで「曖昧なアイデア」を仕様書に変える

AIが構造化されたインタビューを行い、曖昧なプロダクトアイデアからエビデンス付きの仕様書を生成するツール「DeepForm」を作った話。

何を作ったか

DeepForm は、AI が深層インタビューで曖昧なプロダクトアイデアを本番レベルの仕様書に変換するツールである。

デプロイ済みのものは deepform.exe.xyz で触れる。GitHub OAuth でログインすればすぐ使える。

なぜ作ったか

AI でプロトタイプを作るのは簡単になった。しかし、本番に耐えるソフトウェアを出荷するには、エッジケース、セキュリティ要件、受け入れ基準など、非エンジニアが見落としがちな要件を拾う必要がある。

問題は「何を作るか」の精度にある。プロンプトに「こういうアプリを作って」と書いても、抜け漏れだらけの仕様から生まれるコードは結局作り直しになる。

DeepForm は、コードを書く前の段階 —「何を作るべきか」を明確にする段階— に AI を投入する。

5ステップのパイプライン

DeepForm は以下の 5 段階で動く。

1. AI 深層インタビュー

ユーザーが課題テーマを入力すると、AI が構造化された質問を投げかける。汎用チャットではなく、具体例やペインポイントを掘り下げるためのインタビュー専用の設計になっている。

「どんなユーザーが使うのか」「その問題が起きる具体的な場面は」「今はどう対処しているのか」といった質問で、曖昧な思いつきを具体的な要件に変換していく。

2. ファクト抽出

インタビューの内容から、エビデンス付きのファクトを抽出する。すべての要件が「ユーザーの発言のどこから来たか」を追跡できる。

これが重要な理由は、仕様書の根拠が追えるからだ。「なぜこの機能が必要なのか」に対して「インタビューの何分何秒でユーザーがこう言ったから」と答えられる。

3. 仮説生成

抽出したファクトから、検証可能な仮説を生成する。支持するエビデンスだけでなく、反証(counter-evidence)も併せて提示する。

確証バイアスを防ぐための設計である。「ユーザーはこう言っているが、これと矛盾する発言もある」という情報があれば、仕様の精度が上がる。

4. PRD 生成

ISO 25010 品質基準に沿った、MVP スコープの PRD(Product Requirements Document)を生成する。

機能要件だけでなく、性能要件、セキュリティ要件、受け入れ基準まで含まれる。

5. 仕様エクスポート

最終的に spec.json として機械可読な仕様を出力する。API 定義、データベーススキーマ、テストケース定義が含まれる。

この spec.json は Claude Code や Cursor にそのまま渡せる。PRD.md をリポジトリのルートに置けば、コーディングエージェントがそこから実装を始められる。

Campaign Mode

DeepForm にはキャンペーンモードがある。インタビューリンクを共有して、複数ユーザーからフィードバックを集約できる。

1 対 1 のインタビューだけでなく、複数ユーザーの回答をリアルタイムで横断分析し、共通するペインポイントやパターンを抽出する。プロダクトマネージャーがユーザーリサーチするような使い方を想定している。

技術スタック

レイヤー技術
ランタイムBun
サーバーHono + TypeScript
フロントエンドVite + vanilla TypeScript(フレームワークなし)
データベースSQLite + Kysely(WAL モード)
AIClaude API(Anthropic)
認証GitHub OAuth
決済Stripe(オプション、デフォルト無効)
国際化日本語、英語、スペイン語

フロントエンドにフレームワークを使っていないのは意図的な選択である。5 ステップのパイプラインは状態遷移が明確で、React や Vue を入れる複雑さに見合わない。

Molt Market の実験から学んだこと

DeepForm は、同時期に行った Molt Market の実験 と対になるプロジェクトである。

Molt Market では、エージェントに能力と資本を与えて自律的に経済活動をさせようとした。結果は売上 $0 だった。エージェントは「行動する理由」がないと動かない。

DeepForm はその逆のアプローチを取っている。エージェントに自律的な判断をさせるのではなく、人間が「プロダクトを作りたい」という明確な動機を持っている場面で、AI がインタビューと仕様化を担う。

動機が外部から与えられる場面では、AI は確実に機能する。DeepForm が実用的に動いているのは、「何を作りたいか」という人間側の意図がはっきりしているからだ。

セルフホスト

MIT ライセンスで公開している。セルフホストは以下の手順で可能である。

git clone https://github.com/susumutomita/DeepForm.git
cd DeepForm
make start

Bun と ANTHROPIC_API_KEY の環境変数が必要になる。テストは 317 件あり、make before-commit で lint、型チェック、テストを一括実行できる。

まとめ

DeepForm が解いている問題は「AI にコードを書かせる前に、何を書くべきかを明確にする」ことである。

コーディングエージェントの能力が上がるほど、入力の質 — つまり仕様の精度 — がボトルネックになる。DeepForm はそのボトルネックに対するアプローチの 1 つである。